アブシンベル神殿は、アスワンの南西に位置し、第19王朝のラムセス2世が建設した、恐らくエジプト国内でも最大の石像が立ち並ぶ大神殿と、王妃ネフェルタリのために建立された小神殿とからなります。これらは、より南方のヌビア人などに対し、エジプトの強大さを誇示し、畏怖心を起こさせる事にあったと思われます。石灰岩の岩盤を削って作られた神殿で、大神殿の入り口にはラムセス2世の座像が並び、神殿内部にも立像が立ち並んでいます。壁面には、カデッシュの戦いでチャリオットに乗り、弓を射ようとしているラムセス2世の有名な場面が描かれています。神殿最奥部には至聖所があって、ラー・ホルアクティ、アメン・ラー、プタハの神々と共にラムセス2世自身の像が並んでいます。春分・秋分の日の朝には太陽光線がこの至聖所に直接差し込み、プタハ神を除く3体の像を照らすそうです(プタハ神は冥界の神なので)。一方の小神殿入り口にはネフェルタリの立像が立ち並んでいますが、王妃のために神殿が建立されたのは、恐らくこのネフェルタリ神殿しかいないでしょう。
これらの神殿は、ハイダム建設に際して湖底に沈む事がわかり、ユネスコが中心になって各国から資金を集め、もとの場所より60m高い場所へと引越しを行いました。その費用は4千万ドルだったそうです。

大神殿入り口正面。ラムセス2世の巨大な座像が並ぶ。
大神殿内部にはラムセス2世のオシリス像が並ぶ
有名なカデッシュの戦いの絵
敵を打ちのめすラムセス2世
最奥部に並ぶ神々とラムセス2世
向かって右より、ラー・ホルアクティ、ラムセス2世、アメン・ラー、プタハ
ネフェルタリ小神殿の正面
二人の女神から祝福されるネフェルタリ